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zoom RSS オバマ新米大統領誕生

<<   作成日時 : 2008/11/13 06:32   >>

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リンガ・エスプレッソのヤスロウです。

こちらは完全にシアトル独特の冬の天候になってしまいました。高緯度だけあってそもそも日の出ている(はず)の時間が短い上に、毎日雨が降るかそうでなくても曇り空。そのため外にジョギングに出ようとすると、夕方五時前に出ないと、街灯のないところでは暗くてよく道が見えなくなってしまいます。昨晩など、雨の中無理を押して走りに出たら、道がよく見えなくて水溜りに思いっきり踏み込んでしまい、頭の先からつま先までびしょびしょになってしまいました。


さて、皆さんご存知の通り11月4日の大統領選挙でオバマ氏が新大統領(第44代大統領)に選ばれました。とはいっても、彼がすぐ大統領職に就くわけではありません。彼の就任式 (inauguration) は来年1月20日となっています。それまでは米大統領は今まで通りブッシュ氏です。その間、オバマ氏は "president-elect" というふうに呼ばれます。

このブログでも今回の大統領選挙については、「押し詰まってきた米大統領選」、「米大統領選:『踊る阿呆に〜』とブラッドリー効果」、「米大統領選とポップ・カルチャー」、と、3回に渡って続けて取り上げてきましたが、今回でひとまず終わりとしたいと思います。


大統領選の話を終わりにするにあたって、やはり触れずにおられないのが、両候補の選挙結果を受けたスピーチです。まずは、マケイン氏の敗北宣言スピーチ (concession speech) です。時間的にも、これがオバマ氏のスピーチに先行しました。



私はこれをライブで見ました。ニュース・レポーターが "John McCain at his finest" と呼んでいましたが、私もその通りで、いいスピーチだと思いました。時々入る観客のbooingにはちょっとうんざりしましたが。


続いて、オバマ氏の勝利スピーチです。



う〜ん、やはりオバマ氏は優れた雄弁家 (orator) ですね。私はやはり不言実行をよしというふうに考える方ですが、今のアメリカの閉塞感溢れる、希望を見出すのが難しい状況の元では、彼のように言葉で人を動かすことのできる人の役割は大きいのかもしれません。

アメリカに実際住んでいると、嫌な面が否が応でも目につきますが、オバマ氏を大統領に選んだ、ということは、やはりいろんな意味で歴史的イベントであることは間違いありません。アメリカにまだ希望があるということなのかも、と思えます。これが、誤った方向に何年も進んでしまったアメリカの復興の契機になる可能性は十分あると思います。


どういうふうに歴史的か、というと、まず、彼が最初の黒人大統領であることが挙げられます。これの意味の重大さは、おそらく日本にお住まいの方にはなかなかピンと来ないかもしれません。ですので、少しこれについてお話したいと思います。

彼の当選のニュースの反響を報告するTVレポータやそれについて意見を述べる評論家のうち、黒人の人たち複数が感極まって声が詰まっていました。それは一体なぜでしょう?

今日のアメリカにおいても、人種差別は決して過去の遺物ではありません。確かに法律や教育を通じてあからさまな形でのそれを排除する努力はなされてはいますが、あからさまではない形ではまだ残っているのは誰もが認めざるをえないところでしょう。しかも、今の比較的若い成人の祖父・祖母の時代ではまだ人種差別は公然と行われていました。したがって、祖父・祖母の話を聞いて育った彼らにとっては人種差別はまだ生々しい記憶なのです。そういう人たちは、皆平等である、という素晴らしい建前と、依然として存在する差別の醜い現実のギャップに苦しむことが、大なり小なりあるはずです(ただし、断っておくと、今の若い黒人たちにはそういった差別を全く経験せずに育った人たちも増えてきているのも事実です)。

しかし、自分たちと同じ黒人であるオバマ氏が当選したことで、彼らもアメリカで最高の政治権力を持つ地位を正々堂々と獲得することができる、ということが事実として、疑う余地のない形で示されました。かつては奴隷として虐げられていた、という事実を思い起こすとき、そして、かつては公然と差別されていた、という事実を思い起こすとき、よくぞここまで到達できた、と感傷的になるのももっともなことではないでしょうか。TVに出ていた黒人のレポータや評論家が、「この日を今は亡き祖父(あるいは祖母)に見せてあげたかった。」、と何人も言っていたのが印象的でした。


しかし、実はこれには少しトリッキーな面があります。

まず、オバマ氏は「黒人」と言われますが、実は彼は黒人の父と、白人の母との間に生まれたハーフです。しかも、両親は彼が2歳のときに離婚し、彼はほとんど父親と接することがありませんでした。彼は子供時代、母親の再婚相手の出身地であるインドネシアで過ごします。その後、母方の祖父・祖母(どちらも白人)の暮らすハワイで過ごします(この祖母は、残念なことに、オバマ氏の勝利を目前にして他界されましたね)。

しかも、上で彼の父を「黒人」と書きましたが、これには注釈が必要です。この人はケニヤ人であり、アメリカで「黒人」と言ったときに通常想定する、「元々奴隷としてアフリカから連れてこられた人たちの子孫」ではありません。

したがって、オバマ氏の生い立ちは、アメリカのいわゆる「普通の黒人」のそれとは全く違うのです。そのため、オバマ氏が民主党の大統領候補として登場した当初は、彼が "black enough?" かという議論が真面目に行われていました。かつてはキング牧師の後継者と目され、民主党内の大統領候補指名者争い出馬した経験もあるジャクソン師"I wanna cut his balls off." ("balls" = 「睾丸」)というありえないような大失言も、こういった不信感が背後にあったと考えられるでしょう。

しかしこういった不信感もやがて消え去り、話題に上ることすらなくなりました。多くのアメリカ有権者が、アメリカの現状や先行きに対して深刻な不安を抱いており、候補者の人種を云々している場合ではない、というふうに考えたことが、その大きな理由の一つだと考えられます。また、オバマ氏自身も、"race card" を繰り出すことなく(つまり、自分の人種ネタを自分の戦況を有利にするために利用したりせず)、自分の論点を主張することにフォーカスしたことも、結果的に巧を奏したと言ってよいでしょう。


ところで、アメリカ在住のアフリカ出身の人たちと、いわゆる「黒人」とのギャップについては、いつか塙を改めて触れたいと思います。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
僕もライブで二人の演説を聞きました。

ところでオバマ氏は、「歴史上初めての、いい感じの丸刈りアタマの大統領」でもあるのではないでしょうか。アメリカ大統領って、だいたい白髪でサラリーマンカットなイメージがあるんで。

『ところで、アメリカ在住のアフリカ出身の人たちと、いわゆる「黒人」とのギャップについては、いつか塙を改めて触れたいと思います。』
これは楽しみにしています。アリゾナにはどちらのグループも少ないので。
こういち
2008/11/13 07:46
こういちさん、いつもコメントありがとうございます。

ははは、なるほど、髪型には頭が回りませんでした。確かいつぞやのTimeの記事で読んだんですが、オバマ氏は髪を染めて白髪を隠しているので、若く見えるのだそうです。

いつになるかわかりませんが、黒人についての記事は頑張って書きます。

ところで、忘れていましたが、こういちさんアリゾナなんですね。アリゾナではやはりマケイン支持は強かったと聞きますが、そういう実感はありましたか?
ヤスロウ
2008/11/13 07:53
いえ、僕の知人(主に大学を通じた知り合いですが)はみんなオバマ支持でした。
他の州の人から聞くような、派手な集会やボランティアさん達の選挙活動とかはまったく見ませんでした。これはけっきょくマケイン氏の地元だから、そっちで決まりということだったんでしょうか。まわりはオバマ派ばっかなのにな...。
こういち
2008/11/13 15:08
大学生は全般的にリベラルですから、オバマ寄りだというのは理解できるのですが、そうですか、マケイン氏支持の様子は感じられませんでしたか。

ここワシントン州も私が話をするような相手は皆オバマ支持者でした。しかし、選挙結果を見ると、マケイン氏支持が強い州も当然あるわけで、そこの雰囲気は一体どんなもんだろう、と思っちゃいますね。

ヤスロウ
2008/11/14 09:01

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