「ビヨンセ」ではなく「ビヨンセィ」
リンガ・エスプレッソのヤスロウです。
サム講師のブログに、新しい記事、"Reality TV"が上がっていますね。もうご覧になりましたか?近年アメリカのTV番組の中で急激に人気を得て、今ではメジャーなジャンルになった「リアリティーTV」について簡潔にわかりやすくまとめてくれています。是非ご一読ください。
さて、話は変わって、既に解散したデスティニーズ・チャイルドの初期からのメンバであり、いまやソロの歌手としても女優としても有名なBeyoncé Knowlesをご存知でしょうか?音楽には興味のない方でも、近年の映画「ピンクパンサー」や「ドリームガールズ」で彼女を知っている方は多いのではないかと思います。
彼女は日本ではビヨンセと呼ばれているようですが、英語での発音は正確には「ビヨンセィ」と、最後の母音が[ei]の二重母音になる上にここに強勢(stress)が来ます。Wikipediaの彼女の項でも、わざわざ発音記号を持ち出してまでこれを明記しています。
これはéで終わる語(その後に読まれない文字が続く場合も含む)一般に当てはまるルールです。これはおそらく、英語は[e]で語が終わることを嫌うからかと想像されます。(これの例外を別の記事で上げます。)
人名ではなく、一般語では例えば、「婚約者」を意味する"fiancé"(男性の場合)、"fiancée"(女性の場合)があります。これは元のフランス語での発音は[fjɑ̃se]([ɑ̃]はフランス語特有の鼻母音)なのですが、英語では[ˌfiɑːnˈsei]となります。あえてカタカナ表記すると、「フィアーンセィ」となります。
"fiancé(e)"は元々フランス語で、「婚約させる」という他動詞の"fiancer"(英語の"engage"相当)の過去分詞から来ています。過去分詞が"é"で終わる動詞はフランス語には多いのです。また、動詞の過去分詞以外にも"é"で終わる語はたくさんあります。これらが英語に借入されると、同様な発音の変化を遂げます。
…というところで、実際に英語に借入された例を上げようと思ったのですがなかなか思いつかなくて…。とりあえず思いついたのは:"attaché"。"papier-mâché"という言葉もそうです。これはパルプを使った粘土状の物質で、乾くと固化します。クラフトでよく使います。"pâté"もそうです。日本語にも「パテ」という言葉が入っていますね。
また、「履歴書」と意味する"résumé"もそうです。ただ、この語については英語ではもうアクセントつき文字を使わず"resume"と書くのが慣例となってしまっていることもあり、語末を[ei]と読むことはその通りなのですが、強勢は第一音節に置くのが普通です。
なお、上記発音記号の入力にはThe International Phonetic Alphabet in Unicodeというページを参照しました。"Lucida Sans Unicode"というフォントがお使いのPCにないと残念ながら正しく表記されないと思います。前述のページからダウンロードできます。また、上記の発音表記は厳密ではないのですが、音韻学の講義ではないので、ご容赦ください。
この記事へのコメント
ちなみにcaféなんかもそうですよね。日本語の中でも定番になりつつある単語なので気をつけたいですよね。café au lait なども日本語ではカフェオレなので授業でも注意します!
発音記号の表記のサイトを載せていただきありがとうございました。教材作るときなどに結構困っていたので助かります!
そうですね、caféがありましたね。何で思いつかなかったのでしょう?
café au lait は、フランス語では日本語の「カフェオレ」と比較的近い発音なんです。なので、日本語式に発音している人は、「俺は、本来のフランス語式に発音しているんだ」という生意気な言い訳が可能です。
確かに人名は正確に発音したいものですよね。では、次回Byoncéに会うときには、正しく発音してあげてください。:)