流暢さと発話の速さ

リンガ・エスプレッソのヤスロウです。


英語学習の目標を、「ネイティブ・スピーカのように話せるように」という方は多くいらっしゃいます。といっても、よく考えてみるとこの一見単純な目標はさまざまな技能を内包しており、そのうちどれを重視しているかは、個々人によって違うのではないかと想像します。

とはいえ、その一つの重要な側面は「流暢さ」でしょう。さて、ここで私からの質問ですが、「流暢さ」とは、「速く喋ること」だとなんとなく思ってしまっている方はおられませんか?

確かに速く喋ることが出来れば、(発音・文法・語彙等の点で問題がなければ、)、流暢であるという印象を与えられます。これは事実です。しかし、速く喋らないのに流暢である、という状態もありえるのです。これが英語を学ぶ上でまず目指すべき状態であるということを説くのが今回の記事の目的です。


よくよく考えてみると、流暢さの本質は、発話のスピードではありません。ではそれは何かというと、よどみがない、ないしは少ないことです。いくら部分的には速く喋れていても、表現が思いつかなくてつっかかりつっかかりしていては、流暢だというふうには見えないでしょう。

その見地から見回してみると、日本人でも、必ずしも速くは喋らないものの、十分に流暢に日本語を話していると見なせる人が思い当りませんか?ここで具体例を上げられるとよいのですが…笑福亭鶴瓶氏などはどうでしょう?私は神戸に住んでいた中学生の頃から、彼の深夜ラジオに熱中していた部類ですから、親しみを込めて以下つるべと呼ばせて頂きます。皆さんも「る」に強勢をおいて、彼の名前を正しく発音してください。

さて彼の喋りは決して速くなく、むしろ言葉を噛み締めるようではありませんか?(若い頃はもう少し速かったように思うのですが。)しかし、彼が日本語に流暢であることは(…まぁ関西弁ですが)、誰も異論を差し挟まないと思います。YouTubeで彼のビデオを探したのですが、彼の喋りがよくわかるようなものは残念ながら見当たりませんでした。

ところで、つるべが今年の紅白歌合戦の司会に選ばれたんですね。彼が関西ローカルの頃からのファンとしては、非常にうれしいニュースです。


Come On, People: On the Path from Victims to Victorsアメリカ人で、そのようにゆっくり喋る人としては、「アメリカの映画やTV番組を見て英語を勉強する」でも触れた、Bill Cosbyが私にはまず思いつきます。彼はつい先月、共著でCome On, People: On the Path from Victims to Victorsを出版したところなので、幸いにしてそれのプロモーションのためにメディアに登場したときのビデオがYouTubeに多く上がっていました。Meet The Press with Tim Russertという番組でインタビューを受けたときの様子をご覧下さい。最初はTimが喋っていますが、1:12あたりからBillがTimの質問に答え始めます。

なお、彼は元来コメディアンですが、黒人の啓蒙を目的とする活動家(activist)としても知られており、この著書もその活動の一環です。黒人の人たちには、自分たちの生活がよくないのは、社会から組織的に差別されているからだ、と主張する人たちがいます。Billはそういった考え方に一定の理解を示しつつも、黒人に典型的に見られる社会問題は、家庭のレベルから取り組んで行くべきだ、と主張しているようです。「いつまでも周り(社会)のせいにしてないで、自ら何とかしよう」という含みがあります。

さて、どうでしょう、Billの喋り方は?内容が聞き取れるかはさておき、部分的に若干速くなるところもありますが、全般的に非常にゆっくりだと思いませんか?だからといって、彼が流暢ではない、とは思わないのではないでしょうか?それは、彼がゆっくりでも、詰まることなく発言しているからです。


我々にとって英語は外国語なのですから、速く喋ることが難しいのは当然です。私は、うかつにスピードを上げることに腐心するよりも、ゆっくりと、しかしよどみがあまりないように喋られるように努力するのがよいと考えています。

ゆっくり喋ることはいろいろな点で我々にとって有利です。まず、ゆっくり喋ることで、先に話すことを考える時間的余裕が出てきます。また、ゆっくり喋ることで、明瞭に話すことによりエネルギーを振り向けることが出来ます。

特に後者は我々にとって大きな利点でしょう。せっかく、英語として正しい文章を生成できても、発音が悪くて相手に伝わらなかったら全くの台無しです。我々は自信がないとどうしてももごもごと喋ってしまうのですが、これは状況を悪くするだけ。仮に発音に自信がなくても、あるいは話す英語に自信がなくても、大きな声で極力明瞭に話すのが結局コミュニケーションを成立させる上で近道なのです。


最後に余談を。例としてあげるのに検討したのはBill Cosby以外に、「アメリカの映画やTV番組を見て英語を勉強する」と「SeinfeldのBee Movie」で触れたJerry Seinfeldがいます。彼の復帰後の"stand-up comedy"(一人で行う喋りによるお笑い)のビデオも見てみたんですが、正直いまいち。コメディアンにしてはゆっくりな方だとは思いますが、それでもBillほどゆっくりじゃないですね。なにより、今ひとつ面白くない。ちなみに、6:20の時点で、「マクドナルドでハンバーガーだけ注文したら」で触れた、サブウェイのJaredをコケにしています。

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この記事へのコメント

yellow
2007年11月19日 23:02
ゆっくりでも、よどみなく綺麗な言葉で話が出来る・・理想です。
それはどの言語にも言える事だと思います、言葉を選んで話せる位のゆとり、気持ちにも、知識にも、ボキャブラリーにも・・欲しいです(涙)
2007年11月20日 04:07
yellowさん、発想としてはむしろ逆ではないでしょうか。ゆとりがない、ではなく、ゆっくり喋ることでゆとり作る、という風に発想することをお勧めするのがこの記事の本旨です。喋るスピードは自分が決めるわけで、自分がコントロールできます。人間である以上相手の喋るスピードに影響されるのは自然ですが、だからといって相手にあわす必要もないのです。Billを見習いましょう。

もっとも、「ない袖は触れぬ」という側面があるのは事実で、おそらくそこに着目しておられるのだと思います。しかし、騙されたと思って、一度意図してゆ~っくり喋って見てください。心に余裕が生まれれば、それまでできないと思っていたことが意外とできるようになるかもしれませんよ?いくらかでもそういう兆候が見えたらしめたもので、そこから、もし望むのであれば、徐々にスピードアップすればよいのではないでしょうか。
yellow
2007年11月20日 09:12
こちらの主旨は勿論理解した上での発言のつもりでしたが、失礼致しました。<(_ _)>
焦らず、流暢にゆっくり話すを心がけたいと思います。
2007年11月20日 09:19
いえいえ、失礼だなんてとんでもない。これからもどしどしコメントつけてくださいね。
yellow
2007年11月21日 10:18
一時期「When Harry met Sally」のメグ・ライアンの様なテンポのいい、話し方に憧れ、あんな風にレストランで注文してみたいと思いましたが(おばか?)、100年かけても無理と分かり、やはり自分なりのテンポを目指すこととなっています、キャラも違いすぎるし・・(汗)。話し方って大事ですものね・・
ヤスロウさんのご意見を参考に、いろいろな人の話し方に注目してみたいと思います。
2007年11月22日 03:36
私はその映画見たことがないので、YouTubeで探してみたんですが、Yellowさんのおっしゃってるシーンらしきものは見つかりませんでした。いつか見てみようと思います。

他のシーンは見たんですが、Meg Ryanまだ若いですね。髪型も思いっきり'80s。ところで、Megに対する俳優はBilly Crystal。Monster, Inc.でMike Wazowski(目玉オヤジ)の声を演じた人でもあるって、お気づきでした?
yellow
2007年11月22日 09:04
彼も好きな俳優さんの一人、Mike役、勿論存じております。彼は元はコメディアンですか?いつもコミカルで、彼の機関銃トークも面白い、Robert De Niroとの競演「analyze this 」「analyze that」では、その彼さえ、R に食われてます・・是非続けて観て頂きたい!話が脇道にそれて、失礼!!!
2007年11月22日 10:03
それらも見てないんですよ。まいったな。Yellowさんのせいでいっぱい映画みないといけなくなってしまったようです。

さて、Billy Crystalはお察しの通りコメディアンとしても名をなした人です。Saturday Night Live (SNL)でホモのキャラクタを演じてそれが有名だったようです。

http://youtube.com/watch?v=ttOfqPjwJnA
このクリップではMr. Tとハルク・ホーガン?と競演していますね。笑いをこらえきれないMr. Tの様子が素敵です。

http://youtube.com/watch?v=72vpdEc-L_g
これは"When Sally..."の一部なんでしょうけど、これがまた、なかなかうまい物真似(映画Godfatherからマーロン・ブランドが演じたヴィト・コルレオーネの)。
yellow
2007年11月23日 00:30
見ました、見ました、筋肉ムキムキの二人が妙に可愛く見えますね・・「analyze・・」も出てましたよ。もひとつは確かに「when S・・」でした、Godfatherは英会話学習には必要不可欠?
2007年11月23日 09:58
GodfatherシリーズはStar Warsシリーズと同じような意味があるといえるのではないでしょうか?

つまり非常に人気があったために人々の間に浸透し、いろいろな局面で言及される。なので、それを知らないと、今ひとつ理解できない。

…というわけです。私がよく言う言語の文化的側面です。「必要不可欠」とは言いませんが、知っているとより理解が深まります。
yellow
2007年11月23日 14:48
まさに文化的側面・・godfather/ star wars/star trek・・どれも男の子?の世界ですよね?女の子でも同じですか?
さて、日本では?と聞かれても思い浮かびませんが・・
2007年11月23日 15:04
う~ん、私は今までgenderと結びつけて考えたことがなかったのですが、さてどうでしょう。

アメリカでは、Wizard of Ozなども、誰でも子供のときに見ている、という意味で文化的側面の基礎知識と言ってよいでしょう。"Toto, I've a feeling we're not in Kansas anymore."という台詞は、形を変えて何度もパロディーとして使われています。この映画は特に男の子向き、女の子向き、ということはないと思います。あえていうなら、むしろ女の子向き、では?
yellow
2007年11月24日 00:45
なるほど・・確かに女の子向きかも、「不思議の国のアリス」や、マザー・グースなんかも、そういわれてみればいろいろ使われてますね、Humpty さんも、MI3にもデビューしてましたし・・ちょっとしたそんな文化的側面に気が付くと、その世界がぐっと近く感じて嬉しいですね、お付き合い頂き有難うございました。
2007年11月26日 12:48
どういたしまして。今後もどしどしコメントお願いします。

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