某生徒さんの聴き取り訓練への取り組み方

リンガ・エスプレッソのヤスロウです。今回はさる生徒さんが実際にどのように聴き取り訓練に取り組まれているかをご紹介したいと思います。

我々は,英語のネイティブ・スピーカーであるアメリカ人講師と,日本生まれで日本育ち,特にインターナショナルスクールに通ったわけでなければネイティブ・スピーカーに英語を教わったわけでもない,いわば「ごく普通の日本人」である私が,それぞれの長所を活かす形で分担して生徒さんをご指導しています。生徒さんはお一人お一人達成されたい目標も違えば,現時点での英語力も違いますので,それらを全て加味した上で分担のしかたを決めています。いつも2人で担当するとは限らず,アメリカ人講師単独で十分の場合,ないしはアメリカ人講師でしかできないことのみをやる必要のある場合は,私は関与しません(もちろんコンサルテーションや,必要があればアメリカ人講師との間のコミュニケーションの橋渡し,その他事務作業などは行いますが)。逆の理由で,私単独がご指導することもあります。

私がよく担当するのが,聴き取りと発音を合わせて行う訓練です。「そんなのはネイティブ・スピーカーの方がいいに決まってる」と思っている方には意外かもしれませんね。しかし実際には,生徒さんと同じように日本の典型的英語教育を受け,そこから発音を含め様々な問題を経験し克服してきた私がご指導したほうが効果が出やすい領域なのです。既によく知っておられる日本語の発音の知識を利用してアプローチするのが効果的・効率的であるような英語発音上の課題などはたくさんあります。そもそも,ネイティブ・スピーカーの先生には日本人の先生にないような不思議な魔術のような力があって,そういった先生に教われば突然英語ができるようになる,などというのはもう妄想としかいいようがありません。

話が少しそれました。その「聴き取りと発音を合わせて行う訓練」というのは,2段階で行います。最初に,ネイティブ・スピーカーが喋っているのを録音した音源を用意します。生徒さんには事前に自分でそれを聴いて書き取っていただきます。私とのレッスン時には,それを同時に見ながら,私がいろいろヒントを出しながら音源を再生し,極力自力で正解に到達できるよう誘導します。ここまでが第1段階の聴き取りです。第2段階では,そうやって既に正解がわかっている部分を利用して,元の音源をお手本に発音練習です。レッスン時には私が発音矯正を行います。

さて,今回ご紹介するのは,そういう聴き取りと発音を合わせて行う訓練を私と一緒になさっている生徒さんのお一人が,レッスンのとき以外に,予習としてどのように聴き取りに取り組んでおられたか,ということです。この方はそのとき,Billy Maysというアメリカでは比較的知られた "pitchman" (消費者に直接訴えかけて物やサービスを売る人)が出演したテレビ・コマーシャルを題材として取り組んでおられました。そのYouTube上のビデオはこの記事の末尾に掲載しています。

「取り組んでおられた」と過去の話として提示したのは,実はこの情報をこの生徒さんから頂いたのはもう1年も前だからです。そのとき記事のドラフトにまではしていましたが,今まで完成させていませんでした。ちなみにこの方は今もレッスンを定期的に続けて,実力も順調に伸ばしておられます。今はもっと難度の上がった教材に取り組んでおられます。

ちなみにBilly Mays氏は2009年にお亡くなりになりました。私はファンだったので残念です。

さて,以下はこの生徒さんご本人による解説で,予習としてご自身での聴き取りの進められるときの手順です。なお,この教材については私が音声を抽出して,聴き取り作業がしやすいよう細かく分割したファイルをご用意しています。以下で"Seg"と表現されているのは,この分割音声ファイルのことです。

具体的には,おおよそ以下の手順で聞き取りを行いました。

・日曜日:40分くらい繰り返して聞いて全体の構成・話の流れを把握する作業を実施

・月曜日-水曜日:
  1. Segのファイル単位で十数回聞く
  2. YouTubeの動画(文頭の単語が切れていることがあるので)と相互に聞いて画面の内容を元に状況を推察しつつ書き下し1回目
  3. 文頭と次の文の関係をYouTubeの動画の流れから推察して,聞き取れなかった単語の候補となりそうな単語をメモし,辞書などで入りそうな単語でかつ音的に近いものを調査(例: "almond," "grater"とか)
  4. Segのファイル単位で十数回聞いて,いくつか候補がありそうな単語を追記
  5. 文法の観点から文章を見直し,4.であげた候補を絞り込み
  6. 文意から4.であげた候補を絞り込み
  7. ファイル名の英文を確認し,聞き違え部分をSegのファイル単位で十数回聞いて1,2回でそのように聞き取れれば,まずはOK。もっと掛かったものはメモに残す
1.-7.の作業を発音復習の後に1日9つ実施(今使っているプレイヤー(PowerDVD)で一行に入るのが9つなので,一日1行ということ)。

1日当たり40分から1.5時間,その日の調子というかテンションで変わるように思います。全体で,3.5-5時間位ではないかなぁと思います。

可能ならその日に終わった分をGoogleドライブに転記しています。レッスンまでに間があった方がヤスロウさんも講義の計画を立てやすいかと思ったのと初回の方で引っかかった部分を数日すると忘れていそうだったので,講義の際に質問するための記録メモとしても使用しました。

なので,メモになっていないところも何度か英文を直したりという作業はしています。

いかがでしょう?なんとなくやみくもにやるのでなく,実に綿密な戦略と計画をもって取り組まれているのがお分かりいただけるのではないかと思います。もし逆の立場が私が生徒であったなら,ここまでの緻密さで取り組めるかは正直自信がありません。

聴き取りはとかく音の問題,と捉えられがちです。その側面があるのはもちろんその通りなのですが,実はそれ以外の側面,具体的には文脈の活用文法知識の活用がその成否を大きく左右します。私と行う聴き取り訓練でも,もちろん音の側面は取り上げますが(特に速く喋っているときに発音がどのように変化するか),その大きな割合を,いかに文脈や文法知識を利用して推測するかを,具体例を通じてお伝えするのに割きます。上にお見せしたこの生徒さんの取り組み方も,このことの重要性を十分理解しておられることがよく現れていますね。その意味でも,さすが,と思わずにおられません。

さて,先にこの教材については私が音声を分割したファイルを用意している,と述べました。実は,私がどこで分割しているか,ということ自身が聴き取りのヒントになってしまいます。というのは,実際聴き取りをする際には,音の切れ目と文等の意味上の切れ目が必ずしも一致せず,それが聴き取りの障害になることがよくあるからです。私が分割したものを利用する場合この問題は起こらないのですが,それに頼ってしまうと自力で意味上の切れ目を見いだす力はつきません。この生徒さんもこのことはよく認識されていて,最近は私が分割したものに頼らずに聴き取りに取り組まれておられているそうです。

最後に,「で,この方は何の聴き取りをされたのだろう?」と興味を持たれた方は,以下のビデオを御覧ください。普通の話し言葉に比較すると,Billyは明らかにいわゆる「ハイ・テンション」で大げさな喋り方をしています。ですが,あえてこれくらいを真似て練習しておくと,いずれはそれが癖になって,生徒さんご本人が英語を話されるときも,しっかり強弱をつけてお話になれるだろう,という思惑で私はこれをよく教材として利用しています。日本人が話す英語がなかなか「それっぽく」聞こえない理由の一つは,しっかり強弱差をつけてない,ということだからです。



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